論文及び研究データ

・オキナワモズク由来フコイダンの細胞運動阻害作用
(山崎有美¹、²、安藤美子¹、山崎正夫²、立花宏文¹、山田耕路¹ 
¹国立大学法人九州大学、²国立大学宮崎大学)

オキナワモズク由来フコイダンが種々のがん細胞の細胞運動に与える影響について検討した結果、フコイダンは種々のがん細胞に対して有意に細胞運動阻害作用を示すことが示された。また、この作用はフコイダン濃度依存的に発現することが明らかとなった。フコイダンによる細胞運動阻害機構を明らかとするため、マウスメラノーマ細胞株B16を用いて細胞運動に関与しているストレスファイバー形成について検討を行ったところ、フコイダンは濃度依存的にストレスファイバーの消失を誘導することが示唆された。ストレスファイバー形成機序の1経路である、myosin Ⅱ regulatory light chain(MRLC)のリン酸化について検討したところ、フコイダンによるMRLCリン酸化抑制は認められず、むしろ増強する傾向が認められた。以上の結果よりフコイダンによる細胞運動阻害作用は、MRLC経路以外の経路により誘導されていることが示唆された。

・オキナワモズクから分離したフコイダンが高コレステロール給与ラットのコレステロール濃度に及ぼす影響
(琉球大学農学部 上原めぐみ、宮里哲善、田幸正邦、川島由次、知念功、本郷富士弥 放送大学沖縄地域学習センター 尚弘子)
フコイダンは抗血液凝固作用、低コレステロール作用、抗腫瘍作用、抗エイズウイルス作用、および抗胃潰瘍作用等の極めて広い範囲にわたって生理活性を有することから、現在最も注目を集めている多糖の一つである。
ここではオキナワモズクおよびそれから抽出したフコイダンを高コレステロール食に添加してラットに給与し、それらの血清および肝臓の脂質成分に与える影響をセルロースを添加して得た結果と比較して検討した。
血清中の遊離コレステロールはモズク食を与えたラットが最も低い値を有し、次いでグアーガムおよびフコイダン食の順に高い値を有した。対象のセルロース食群は最も高い値を有した。総コレステロール濃度はセルロース食群を除いて、いずれも低い結果が得られた。肝臓中の遊離およびエステル型コレステロールの濃度は若干グアーガム食群が低い値を有したが、その他の食群には差が認められなかった。総コレステロール濃度は、モズク食群が著しく低い値をしるし、フコイダン食群は、セルロース食群に比較して低い値を有した。以上の結果よりオキナワモズクおよびそれから抽出したフコイダンは低コレステロール作用を有することが示唆された。

・海藻・乳酸菌由来成分の抗炎症・生体防御作用に関する研究
(東京大学農学部 川島忠臣)
本研究では乳酸菌と海藻由来成分に着目し、それらが免疫機能を改善し、アレルギー疾患をはじめとする免疫機能恒常性の破たんに起因する疾病の症状軽減に寄与することを明らかにした。
海藻に含まれる多糖であるフコイダンの効果について調べた。本研究では免疫調節作用を有する乳酸菌 Tetragenococcus halophilus KK221(以下、KK221)とフコイダンを併用したときの効果について検証した。まず、マウス腹腔浸出マクロファージやマウスパイエル板、腸間膜リンパ節、脾臓由来の細胞を用いた試験においては、フコイダン単独ではIL-12やINF-γなどのサイトカイン産生が微弱であるのに対し、KK221存在下でフコイダンを添加すると、フコイダンの濃度依存的にサイトカイン産生誘導が増強することが確認された。マクロファージを用いた試験において、フコイダンを添加したときにKK221を貪食する細胞の割合が増加したことから、フコイダンの貪食促進作用が関与することが示唆された。また、フコイダンを脱硫酸化するとこの作用が消失する一方で、酸加水分解により低分子化したフコイダンでは、活性の消失は確認されなかった。このことから、フコイダンの分子量ではなく硫酸基がこの作用に必須であることが示された。
実際にマウスに経口投与をおこない、抗原特異的応答を調べたところ、乳酸菌とフコイダンを同時に摂取したときに最もTh1免疫が増強し、Th2免疫が抑制された。以上より、フコイダンを乳酸菌と同時に摂取することで、乳酸菌の免疫調節作用が増強されることが示された。